コロナ禍で一時は落ち込んだものの、グローバル化やインバウンド需要の高まりにより、海外からの観光客は増える一方であり、また日本で暮らす在留外国人も増加の一途をたどっています。そんな外国人を対象に、自社の製品やサービス、日本文化の紹介といったコンテンツを、多言語で紹介するWEBサイトやメディアも増えて来ています。
ここで言う「多言語対応」のWEBサイトとは、コンテンツを日本語だけでなく英語や中国語、韓国語など様々な言語で利用できるWEBサイトのことを指します。
多言語対応と聞くと、単にテキストを翻訳して掲載すれば良いと考えがちです。しかし、外国人にとって日本の「常識」は、常識ではないことも多いのです。海外の文化や習慣にまで配慮したWEBサイトを作ることが、本当の「多言語対応」だと言えるでしょう。
日本人だけではなく外国人もターゲットとなる業種やサービス、そして各自治体の観光紹介などを扱うWEBサイトでは、今後多言語での対応が必須となって来るでしょう。
今回の記事では、そういったWEBサイトの多言語化制作について解説していきます。
【関連記事】
>インバウンド集客には動画プロモーションが効果的!訪日外国人を魅了する動画制作のポイント
>インバウンド動画の事例8選!動画制作を成功に導くポイントも紹介!
目次
1 .多言語対応のWEBサイトはなぜ必要なのか
前述の通り、新型コロナウイルス感染症による落ち込みは確かにあったものの、訪日する外国人観光客の数は現在回復傾向にあり、今後も引き続き増えていくことが予想されます。
また、海外から日本に移り住む在留外国人の数も増えており、令和4年(2022)末の在留外国人数は307万5,213人となり、前年末に比べ31万4,578人(11.4%)の増加で、過去最高を更新。初めて300万人の大台に乗りました(※1)。
消費額で見ると、コロナ禍前、平成31年(2019)の訪日外国人と在留外国人を合わせた日本国内消費額は、10兆円に達していました。同年1~3月の訪日外国人に限った旅行消費額は1兆1,182億円(※2)でしたが、令和5年(2023)1~3月は1兆146億円となり、2019年の88.1%にまで回復したそうです(※3)。
インバウンド需要が今後復活していけば、外国人をターゲットとした市場はさらに拡大するでしょう。これからの時代、多言語対応のWEBサイトが必須になるのも当然ではないでしょうか。
(※1)出入国在留管理庁「令和4年末現在における在留外国人数について」
(※2)訪日外国人消費動向調査2019年1-3月期(1次速報)について
(※3)観光庁「訪日外国人消費動向調査2023年1-3月期(1次速報)について」
2.多言語対応のWEBサイトを持つメリットとは?
多くの外国人が日本を訪れ、居住するようになった今、外国人をターゲットにできる商材やサービスを持つ企業の場合、多言語対応のWEBページの存在は大きなビジネスチャンスに繋がります。
ここでは、多言語対応のWEBページを作った場合の具体的なメリットを3つご紹介しましょう。
海外とのコミュニケーションの接点ができる
グローバル化の時代を迎えた現在、ビジネスをしていく上での顧客、あるいは見込み顧客としての対象となるのは、国内にいる日本人のみに留まりません。在留外国人はもとより、訪日外国人旅行者、ひいては今後日本に興味を持つ可能性のある、海外にいる外国人までもを視野に入れる必要があるかもしれません。
このような海外の顧客を対象とする場合、多言語対応のWEBサイトがあると、そこでコミュニケーションが図れます。例えば自社の製品やサービスの魅力を、多言語化したサイトで伝えられれば、製品購入や問い合わせなどのコンバージョンを増やすことが可能です。
ただし、海外からの問い合わせは日本語で来るとは限りません。対応が難しい場合には、外国語に堪能なスタッフを手配する、翻訳対応のできるサポートセンターと契約するなどの対策も必要です。
世界の市場を対象とすることで売上拡大が期待できる
多言語対応のWEBサイトを作り、外国人ユーザーに情報を発信することで、上述のように海外とのコミュニケーションが広がり、コンバージョンにも繋がっていきます。そうなると自社の商品やサービスに対する、外国人からのフィードバックも得られるため、これまでになかった視点での商品やサービスの改良が行えます。さらに、新たな企画や新商品に向けてのアイディアが得られる可能性もあるでしょう。
SNSによる拡散も期待できる
SNSで情報を発信したり収集したりするのが一般的になっているのは、日本だけではありません。海外のユーザーもSNSを駆使した情報収集を行いながら、新たな商品やサービス、企業と出会う機会を得ているのです。
多言語対応したWEBサイト、あるいはブログ記事などを作成しておくと、その内容に興味を持った外国人ユーザーがSNSでシェアしてくれることもあり得ます。それにより情報が拡散し、世界中のユーザーに知ってもらえる可能性も出てきます。
3.多言語対応WEBサイトの制作ポイント
WEBサイトをローカライズし、多言語に対応するということは、単に言葉を外国語に置き換えることを意味するのではありません。しかし、日本語のサイトをそのまま翻訳しただけで、多言語対応を謳っているサイトも少なくないのが現状です。
もちろん、コストや時間の問題でそうせざるを得ない場合もあるでしょう。ですが、外国人に自社の商品やサービス、各自治体に興味を持ってもらい、何らかのアクションをしてほしいと思うのであれば、外国人が知りたい情報や魅力を外国人の目線で考え、サイト制作に活かすことが欠かせません。
「ローカライズ」とは単なる翻訳ではありません。対象となる地域の文化や慣習、法律、センシビリティへの配慮をし、その地域のユーザーに受け入れてもらいやすくすることが大切なのです。
ここでは多言語対応のWEBサイトを作る上で、注意しなければならないポイントをまとめました。
文化の違いに配慮しよう
多言語に対応し、海外とのコミュニケーションを図る上で忘れてならないのは「文化の違い」です。これを理解しておかないと、知らずに相手に不快感を与えたり、意図したものとは全く違うイメージで受け止められてしまったりしかねません。
日本人同士なら「暗黙の了解」で通じることが、外国人との間では通じないどころか、真逆の意味に取られてしまう可能性もあるのです。
例えば「色」に関しても、国や民族によって受ける印象は変わってきます。日本では「白」という色に対し、「清浄」「純粋」といったイメージを持つ人が多いと思いますが、中国やインドなどでは喪失を表す色であり、ネガティブにとらえる人も少なくありません。
また、四季がはっきりしている日本と、雨季と乾季しかない地域では、季節感も全く違います。日本では新年度が始まる象徴として、桜が使われることも多いでしょう。しかし他の多くの国では、桜にそのようなイメージはありません。
このように色一つ、季節一つをとっても、それぞれの国や文化によって、イメージは大きく変わって来ます。さらにはジェンダーや宗教などの繊細な事柄への配慮といった「文化適合性の確認」も、多言語対応のWEBサイトを作る上で、忘れてはならない要素です。
デザインも国によって好みがある
上述した文化の違いによって、WEBサイトのデザインもまた変わってきます。日本人は一般的に、情報がたくさん掲載されているのを好むため、日本語のWEBサイトにはできる限り多くの情報を詰め込む傾向があります。
しかし異なった文化の視点からは、日本のWEBサイトは「情報過多」に見られがちです。写真やキャッチコピーの構図や配置、文字の大きさなども、日本人と外国人の好みの違いが大きい部分です。
最初に出て来た画面で「見にくい」「わかりにくい」といった抵抗を感じてしまうと、その先を見よう!と言う意欲は失われてしまいます。そんな事態を防ぐためにも、対象とする言語で一般的なWEBサイトを事前に研究して、どのようなデザインが好まれるのかをリサーチしておきましょう。
技術的な面のフォローも忘れずに
ここまで文化やデザインの面を見てきましたが、多言語対応のWEBサイトを最終的に成功させるには、日本語サイトの構築と同様に技術面を忘れてはなりません。
例えばサイトのドメインにも注意が必要です。日本語サイトと同じ「.jp」や「.co.jp」をそのまま流用するケースもありますが、できれば対象とする国の独自ドメインを取得することをおススメします。
また、言語ごと・国ごとに、高い効果が期待できるSEO設計も必須です。それぞれの言語で検索されるキーワードを想定したコンテンツの作成も求められるため、日本語のサイトをそのままコピーするのは避けた方が良いでしょう。
その他、多言語対応のWEBサイトを運営していく上では、サーバーなど技術面でのトラブルが発生することも。問題の迅速な解決を図るには、やはり専門的な知識や実績のある制作会社に相談するのが得策です。
4 .翻訳について考えるべきこと
ここまで、多言語対応のWEBサイトを制作する上で、注意すべき点を見てきました。それでは実際に制作に入るとして、一番肝心な「翻訳」についてはどう対応したら良いのでしょうか。
WEBサイトを作ろうとする際、そこには必ず何らかの目的があるはずです。それは国内向けも海外向けも変わりません。WEBサイトに顧客を流入させることで、「知ってもらいたい」「問い合わせしてほしい」といった目標を実現したいのではありませんか。
多言語対応のWEBサイトの場合、日本語の文章を右から左へ訳しただけでは、外国人に共感してもらうことはできません。そのサイトが伝えたい魅力を理解してもらうには、相手の文化に配慮した翻訳をする必要があります。
需要の多い言語とは?まずは何語に対応するべき?
そのWEBサイトがターゲットとする外国人の属する国や地域によって、選択する言語は異なります。例えば訪日する外国人観光客が対象のサイトなら、実際に日本を訪れている外国人旅行者の内訳を参考にするとよいでしょう。
具体的には中国・韓国・台湾・アメリカといった国々が挙げられると思います。中でも話者が多いのは、やはり英語と中国語でしょう。手始めにこの二つの言語に対応したWEBサイトの制作をおススメします。
ただし、中国語には簡体字と繁体字が存在しますし、英語にもアメリカ英語やイギリス英語など、地域によって違いがあります。この違いにも留意しながら、外国人がストレスなく情報収集できるサイトの実現を目指しましょう。
日本語をそのまま訳しても共感は得られない
何度も言及している通り、背景となる文化を考慮しない翻訳では、せっかくWEBサイトを訪れてくれた外国人ユーザーに興味を持ってもらえない恐れがあります。
最近ではGoogle翻訳やDeepLなど、無料で使える機械翻訳も手軽に利用できるようになりました。また、進化の著しいChatGPTなどのAIを使って翻訳する方法もあります。
しかしこういった翻訳はまだ精度が低いだけでなく、時にはまったく逆の意味の文章を出して来ることも。それをチェックせずに掲載してしまうと、サイトを運営している企業自身の信頼の低下にも繋がりかねません。
ツールの利用や専門業者への依頼も検討しよう
「WEBサイトを多言語対応にする」と言う目的を達成するためには、質の高い翻訳が不可欠です。また、内容を更新し続けることまで考えると、リソースの確保も考えなくてはなりません。専門の翻訳業者に依頼するか、精度の高さで定評のあるWOVN.ioやMYサイト翻訳といった有料サービスの利用も、検討してみてはいかがでしょうか。
5.多言語対応のWEBサイトを外注する際の費用相場
多言語対応のWEBサイトを制作会社に依頼する場合、より専門的なスキルや翻訳作業が必要になるため、日本語サイトよりも料金が高くなるケースがほとんどです。
サイトのボリュームやデザイン、開発の要件などによっても相場は大きく変わりますが、小規模なものなら50万円程から可能です。もちろん、規模が大きくなれば費用もかさみ、中には数千万円かかるケースもあります。
さらに使用する言語によっても料金は変わってきますので、まずは一度、制作会社に見積もりを依頼してみましょう。
まとめ:相手の文化にも配慮した多言語対応のWEBサイトでグローバル化を目指そう
我が国では今後も、グローバル化の流れが止まることはないでしょう。観光立国を目指す中で、訪日外国人旅行者の増加を考えた時、国内だけでなく海外の市場にも目を向けていくことで、新たなビジネスチャンスが広がっていくのではないでしょうか。
そのためにも、外国人に「魅力的」だと感じてもらえるような、多言語対応のWEBサイトの需要は、これからも増え続けるはずです。今回はそんな状況を踏まえ、WEBサイトを多言語化する際に必要な注意点や、制作のポイントなどについてご紹介してまいりました。
多言語化をうまく実現するためには、単なる翻訳に留まるのではなく、デザインや文化的な配慮など、専門的な知見が欠かせません。この記事を参考に、制作会社に相談してみてはいかがでしょうか。